着物は長い歴史の中で受け継がれてきた、日本が誇る伝統文化のひとつです。古くから日本人にとって馴染みのある着物ですが、その誕生の歴史については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。また、着物生地にはどのような種類があるのでしょうか。着物生地をリメイクする前に、まずは着物のルーツをさかのぼってみましょう。

日本が誇る着物生地のヒストリー

着物生地

現代に近い形の着物が生まれたのは、平安時代に入ってからのことです。それ以前はズボンやワンピース状の衣服が主流で、大陸文化の影響が見られるものでした。

平安時代に入ると、生地を直線に裁断し縫い合わせる「直線裁ち」という方法で着物が作られるようになります。宮廷に仕える高位の女官が着た、何枚もの大袖を重ねた十二単(じゅうにひとえ)は有名です。色の組み合わせも、階級や季節を表現した色調などを取り入れ、日本独特の色の調和を重んじる伝統が生まれたのです。

鎌倉・室町時代の武家社会に移ると、袴や裳は省略されて袖丈が短い「小袖」が残り、今の着物の原型が出来上がったとされています。安土桃山時代には華やかな桃山文化が生まれ、華麗な模様を施した着物をまとうようになります。江戸時代には、身分制度によって着物の生地や色に制限が設けられました。そこで庶民は着物の模様や帯の結び方、小物使いなどでおしゃれを楽しむようになり、染織技術が発達すると共に多彩な着物文化が生まれました。

明治時代になると徐々に西洋の生活習慣が定着し、洋装が主体の生活へと変化します。その後、着物の上にコートを羽織るような和洋折衷の服装や洋風なデザインの着物が流行し、ファッションとしても着物を楽しめるようになってきました。洋服が中心となった現代では、特別な行事などの礼服や晴着として着物を身につけることが多く、素材やデザインも多彩になっています。

着物生地の種類

着物生地の種類

着物生地には様々な種類があり、用途や季節によって使い分けられます。一般に着物で使われる生地を大きく分けると次の5種類です。

絹は正絹とも呼ばれ、振袖や訪問着などの伝統的な技法で仕立てられた着物の多くは絹で織られています。手触りや肌触りが非常に良く美しい光沢もあり、しなやかで保湿性・通気性にも優れた最高級素材です。一方で湿気に弱く、日光により変色することがあります。

木綿

綿花を原料とする木綿はコットンとも呼ばれ、通気性・吸湿性に優れており肌触りの良さも特徴です。丈夫で耐久性があり、普段着用としてスタンダードに用いられています。ただし縮みやすくシワになりやすいので、取り扱いには注意が必要です。

麻は吸湿性と通気性に優れており、薄手で軽いことから夏用の着物や浴衣に向いた生地です。一方で麻はシワになりやすく、やや硬めの手触りで色落ちしやすい欠点も挙げられます。

ウールやアルパカなどの毛は厚手で暖かく、冬場の普段着によく用いられます。汚れに強くシワになりにくい、肌触りがやわらかく吸湿性に優れているといった利点がある一方、洗うと縮みやすい、摩擦に弱い、虫害を受けやすいなどの注意点もあります。

化繊

化繊とは化学繊維のことで、ポリエステル・ナイロン・レーヨン・アセテートなどの素材があります。比較的安価で汚れに強く、自宅で洗えるなどお手入れが簡単なのが利点です。一方で通気性や吸湿性に乏しい、静電気が起きやすい、着崩れしやすいといった欠点も挙げられます。

着物の奥深さは生地のみにとどまりません。着物の柄の魅力は、海外の一流デザイナーにインスピレーションを与え、ブランドのデザインモチーフにもなっています。お手元の着物柄や生地を活かしたリメイク品のデザインを考えるのも、リメイクの楽しみのひとつです。

着物生地のリメイクをおすすめする理由

大切な方から譲り受けた着物や奮発して購入した着物には、並々ならぬ思い入れがあるものです。しかし洋服がメジャーな現代では、着物に触れる機会はなかなか少ないもの。瑠璃猫では、日本の伝統文化である大切な着物を有効活用したいという思いがあります。着物生地をストールやバッグ、財布、カードケースなどの小物にリメイクすることで、愛着を持って毎日使い続けられるアイテムに。美しい色柄はファッションのアクセントになり、和服はもちろん洋服とのコーディネートも楽しめます。

着物生地は、日本が世界に誇る伝統文化かつ伝統工芸品です。絹などの貴重で質のよい素材を無駄なく使用し、匠の技による染や織、刺繍のすばらしさが1枚の布に詰まっています。着物に触れる機会が減りつつある現代、日本の伝統衣装を気負わずに普段使いしていただけるよう、新たな生を受けたものが着物リメイクアイテムなのです。

上質な素材で作られた着物は何世代にもわたって使えます。形式に捉われすぎず、着物生地の魅力をより身近に感じていただければ幸いです。瑠璃猫は、着物リメイクを通して着物文化を継承することはもちろん、卓越した技術で和服の細部の優美さまで表現する、和裁技能士という職業の向上にも努めてまいります。